【根保証契約】根保証は「貸す側の命綱」|極度額と公正証書で回収不能リスクを防ぐ

高額のお金を貸すとき、いちばん怖いのは「返ってこないこと」。
いざ滞れば貸した側が泣き寝入りになる場面は少なくありません。

そこで有効なのが根保証です。
根保証は、継続的な取引や将来の債務までをカバーできる“貸す側を守る”仕組み
ただし、2020年の民法改正以降は極度額(上限額)の定めが必須になりました。
本記事は、貸主目線で「根保証×極度額×公正証書」による回収できる契約設計を、実例テイストで解説します。

目次

保証人がいるのに回収できない——よくある落とし穴

「保証人は付けたから大丈夫」——そう思って契約したのに、いざ滞ったら強制できない
理由はシンプルで、根保証の“設計”が甘いからです。
とくに極度額がない根保証は無効リスクがあり、貸主にとっては回収ルートを自ら潰してしまう致命的なミスになり得ます。

根抵当権と似ているので設定はしっかりと!

極度額を定めていなかった根保証契約

貸主Aさんは、知り合い事業者B社に500万円を融資。
念のためB社の知人Cさんを保証人につけ、根保証の合意書を作成しました。

ところが、その合意書には極度額(保証の上限)が明記されていませんでした。
返済は数か月で止まり、B社は「資金が厳しい」、保証人Cさんは「契約が無効では?」と主張。
Aさんは、保証人がいるのに強制できないという壁に突き当たりました。

常に自分の強制力はどこまでか確認しましょう

極度額なし=無効リスク/貸主も守れない

2020年の民法改正により、個人根保証は極度額の定めが必須です。
明記がなければ無効となるリスクがあり、貸主はこうした不利益に直面します。

  • 保証契約の無効主張で回収が長期化・不確実化
  • 裁判コスト・時間・心理的負担の増大
  • 高額債権ほど資金繰りや事業継続に直撃

つまり、根保証は「付けたら安心」ではなく「どう設計したかで安心が決まる」制度です。

登記事項では見落としはありませんが、個人間だと不十分になることも

公正証書で「回収できる根保証」に作り替える

当センターはAさんに、根保証契約の再設計公正証書化を提案しました。
ポイントは次の3つです。

債務の範囲を明確化…どの取引・どの債務まで保証対象にするかを具体化(運転資金/売掛金決済/借入等)。>>どのくらい??

極度額を数値で設定…上限を明記(例:極度額500万円)。分割払の遅延・期限の利益喪失条件も併記。>>>何円まで??

強制執行認諾付きの公正証書…滞納時に裁判を経ずに差押えへ進める実効性を確保。>>差し押さえの約束

この再設計により、Aさんは「貸したお金を守れる状態」を取り戻しました。
保証人Cさんにも、保証の範囲と上限が明確に示され、紛争の芽を最小化できます。

貸主を守る“法律(条項)”の考え方

条文の文言そのものより、どの論点を落とし込むかが勝負です。

貸主保護の観点から、以下は必須級です。

  • 極度額:保証の上限額。高額案件では「利息・遅延損害金・費用」の扱いも定義。
  • 期限の利益喪失事由:分割遅延・虚偽申告・担保価値の著減・支払停止等で一括請求に切替
  • 強制執行認諾:滞納時の任意交渉をショートカットし、差押え等へ直行できる導線。
  • 第三者弁済の許容:代理弁済を受けて回収スピードを上げる。
  • 通知義務・情報提供:債務者の財産変動・重要事由の発生を貸主が早期把握。

これらを公正証書に落とすことで、単なる約束事を“守られる約束”へと変えます。

貸主が得られる3つの安心

  • 契約の有効性:極度額の明記で「無効リスク」から解放。
  • 回収の実効性:執行認諾により、滞納時でも時間をかけずに動ける
  • 予見可能性:上限と条件が明確で、資金計画が立てやすい。

Aさんのケースでは、公正証書化後に返済が再開。仮に止まっても、差押え手続へ進めるカードを持てたことで、精神的負担は大きく軽減しました。

よくある誤解 Q&A(貸主目線)

Q1. 借用書があれば十分では?

A. 高額・継続取引の場合は十分ではありません。借用書は特定の債務を前提としますが、根保証は将来の債務も対象にでき、極度額とセットで貸主の回収可能性を高めます。

Q2. 保証人がいれば安心?

Q2. 保証人がいれば安心?

A. 極度額のない個人根保証は無効リスクがあります。保証人の存在だけでは足りません。
極度額×執行認諾×公正証書まで落としてはじめて、貸主の安心が実体を持ちます。

Q3. 途中で条件を変えたい場合は?

A. 再合意のうえで変更契約を公正証書にします。分割→一括の切替条件や、上限の見直し、返済日の変更等は、曖昧なメッセージのやり取りで済ませないことが重要です。

Q3. 途中で条件を変えたい場合は?

A. 再合意のうえで変更契約を公正証書にします。分割→一括の切替条件や、上限の見直し、返済日の変更等は、曖昧なメッセージのやり取りで済ませないことが重要です。

場面別フローチャート(テキスト版)

貸す前:債務の範囲整理 → 極度額の設計 → 他、条項適応 → 公正証書で締結


すでに貸した:現状整理 → 再合意で極度額設定 → 執行認諾付き公正証書へ作り替え
滞納が発生:催告 → 条件履行なければ執行手続へ移行(差押え等)

関連する高額領域:預り金・保証金・前払金・共同事業出資など。性質により条項設計が変わるため、「貸付と同じに扱わない」ことが貸主を守るコツです。

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この記事を書いた人

公正証書専門の法律家

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